【データで読み解く不動産市況】第3回 2023年 路線価を読み解く~意外な地域も急上昇?~
COLUMN
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2023.07.20
7月3日に国税庁から路線価が発表されました。ご承知のとおり、路線価は、相続税、贈与税に係る土地などの評価額の算定基準となります。
23年分の路線価では、全国平均で前年比プラス1.5%、2年連続の上昇となりました。新型コロナウイルスの影響がほぼなくなり、経済再開、国内外の観光客増などが顕著に反映され、回復もしくはコロナ禍前を上回る状況となりました。
今回は、23年路線価についてお伝えします。
路線価とは
路線価の価格時点は1月1日で、公表は毎年7月1日にされます(今年は土日をはさみましたので、3日となりました)。路線価は、4つの「公的な土地価格」のひとつで、道路に面した宅地の評価額を示し、毎年1回国税庁から公表されます。国税庁が公表していることから分かるように、相続税・贈与税、固定資産税における不動産の価格算定に用います。路線価は、全国にある宅地、田、畑、山林が対象となります。ここでいう、「宅地」とは、住宅地という意味ではなく、住宅、商業施設、ビル、工場など、その用途にかかわらず、「建物の敷地となる土地」をさします。
23年中に、お亡くなりになった方の相続に伴う相続税、23年中に行われた贈与に伴う贈与税などは、今回発表分の路線価を使い価格算定することになります。
地価公示との関係
路線価は、3月下旬に公表される公示地価と同じ価格時点であり、また公示地価の80%程度を目途に評価されています。そのため3月に発表される公示地価と同じような傾向となります。そのため、今年の路線価も地価公示と同じような結果となっています。
23年路線価の状況
全国約31万6千地点(標準宅地)の平均変動率は前年プラス1.5%となりました。前々年はマイナス0.5%、そして前年はプラス0.5%でしたので、前年から1ポイント伸び率が拡大したことになり、回復が鮮明となっています。
都道府県別の変動率でみれば、前年比で上昇した都道府県は27都道府県、変動率が上昇(もしくはマイナス幅が縮小)したのは45都道府県となっています。また、マイナスからプラスになったのは、7県(横ばい含む)となりました。
上昇率がトップだったのは北海道の6.8%(前年も1位:4.0%)、つづいて福岡県4.5%(前年も2位:3.6%)、宮城県の4.4%(前年も3位:2.9%)、沖縄県の3.6%(前年も4位:1.6%)、東京都3.2%(前年は6位:1.1%)となっています。上昇率ベスト4は昨年と同じで、また地価公示と同じように、地方主要地域の上昇が目立っています。
県庁所在地の最高路線価
都道府県庁所在地の最高路線価地点をみると、上昇したのは43地点でした。前年は31地点、前々年は8都市の地点でしたので大幅に増え、ほぼ全国に広がっていることがわかります。
下落したのは4地点で、前年は16地点でしたので、全国的な地価回復状況がわかります。
図1は、都道府県県庁所在都市の最高路線価を「対前年比」の順に並べたものです。(注:千葉市は最高路線価地点に変動があったため、圏外にしています。
トップは岡山市、次いで札幌市、さいたま市、福井市、奈良市、岐阜市、秋田市の順となっており、地方の県庁所在地中心部での地価上昇が顕著な事が分かります。
意外な?地方都市が上位にランクイン、その背景は?
上記の上位地点には、意外にも(失礼!)、人口減少の県で、県庁所在地(市内)の地価が下落している地域の中心部地域がランクインしています。15位以内まで広げるとその傾向がいっそう顕著です。
例えば、福井市では、新幹線開通が迫り、駅前再開発が進んでおり、そこに29階建ての北陸地域最高層のタワーマンションが建築中です。同じように地方都市のメイン駅周辺やかつての中心街の再開発が進み、そこにタワーマンションが建つ、という状況は多く見られ、路線価にそれの影響が顕著に出たということでしょう。
北陸新幹線の延伸と今後の見通し
路線価の今後の見通しですが、冒頭に述べたように基本的には地価公示と同じ傾向になります。今年の地価公示での本サイトの原稿でも書いたように、経済状況が活況である事が鮮明な事、観光客の増加、人流増加が顕著な事などから、24年に公表される地価公示、路線価とも多くのエリアで今年を上回るでしょう。また、後半に述べたように、地方のこれまで開発が進んでいなかった中心都市の再開発が進み、こうしたエリアの路線価上昇基調がより顕著になるでしょう。また、23年度末に予定されている、北陸新幹線の延伸(金沢~敦賀間)に伴い、新幹線停車駅の駅周辺も期待できそうです。
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